今ならうまくやれるのに、、
私が役者をやっているころの話です。
主に時代劇中心に社長が仕事を取ってくる事務所だったので、大半はその仕事だったのですが、ある日キャラクターショー出演の仕事がありました。
キャラクターショーといっても、ヒーローショーではなく、かわいいキャラクターを身にまとい、子どもたちと写真撮影をしたり、音楽に合わせてダンスをするようなショーでした。
前々からお伝えしておりますが、若い頃の私は子どもが死ぬほど嫌いでした。
最初にショーを行いそれから写真撮影会という流れで、それを午前と午後の二部構成で行うというものでした。
正直、着ぐるみの中に入っていると異常に暑く、季節にもよるとは思いますが、私が仕事をした秋頃の時期でも30分から40分間動き回ると、着ぐるみの内部ではかなり汗だくになります。
元々暑さが苦手な私はイヤでイヤでしょうがなかったのですが、そこは仕事なので我慢して仕方なく続けておりました。
ダンスあとの撮影会まで約10分から15分程度の休憩をはさむのですが、その程度の時間ではあまりクールダウン出来ないくらいの状況でした。
そんな状態で写真撮影会に臨むのですが、暑さでイライラしている上に生意気な子どもたちに囲まれ、当時の私は「こんな仕事受けなきゃよかった」としか思いませんでした。
そんな気持ちですから、せっかく楽しみに来ている子どもたちの前でかわいい動きも特にせず、ほとんど棒立ち状態です。
着ぐるみは自分が思っている以上にオーバーな動きをして、初めて普通の動きに見えるため、棒立ちなんてもってのほかです。
そのやる気のないキャラクターに気づいた、ある小学生の男の子が「なんだこいつ。やる気ねぇの」と言ってきて、顔の着ぐるみ部分の下の開いた部分から私の顔を覗いてきます。
そこでその男の子が「この中って変なおやじが入っているぞ!」と周りにいた友達に伝えます。
その言動に頭に来て、さらに23才くらいでおやじと言われたこともショックだった私は、その子にボソッと暴言を吐いてしまいます。
「うるせぇくそガキ。さっさとあっち行け!」と。
いやぁー今考えると、とんでもない演者ですね。
プロ意識のかけらもなにもあったもんじゃないです。
またその台詞が引き金となり、さらにその子が友達を呼び、その集まった子たちが一斉に「おやじ!おやじ!」とコールが始まります。
その異変に気づいた主催者側のひとりが私のもとにやって来ます。
そして裏へ連行され、私に聞いてきます。
「どうしたの?何かあったの?」と。
私も私で、それこそくそガキ。
なんと、主催者側に文句を言います。
「だってあのガキが顔を覗いておやじおやじって言うんですよ」
これはひどい、、、。
そう言っているお前が一番くそガキだろと、今なら思える出来事です。
その言動に主催者側は怒り心頭です。
その場では「がまんして。気を取り直して頑張って」と言われましたが、後日事務所にクレームの電話が入りました。
今思えば、その方は至極大人な対応かと思いますが、当時の私はまったくそうは思わなかったのです。
社長に「〇〇君。先方かなり怒ってたよ。今後仕事をお願いするのは考えるって」と私を特に怒ることはなかったのですが、そんな主催者側と社長がせっかく取ってきた仕事を私がダメにしたにもかかわらず、私に対する優しさに気づけない私はこう思います。
「あー良かった。あんな仕事誰がやるか」と。
このブログを書いていて、とても同じ人間の所業とは思えません。
「そんなプロ意識のかけらもない姿勢だからお前は売れなかったんだ」と当時の私に言いたいです。
まぁこういう失敗を繰り返し、その失敗を糧に出来たから良かったものの、このまま大人になっていっていたらと考えるとゾッとしますね、、、。
今でしたら子どもの行動や言動も理解出来ますし、その時も気の利いた返しをして、その場をやり過ごせたかと思いますが、「後の後悔先に立たず」。
こうして人って成長していくんですね。
これも人によるとは思いますが、若いって最大の武器であると同時に、恥ずかしい歴史でもあります。
この恥ずかしい歴史を赤裸々に綴ることで、自身の反省点や調子に乗りやすい点を明らかにし、日々精進していきたいなと感じた51才の私でした。
本日も長い文章にお付き合いいただきありがとうございました!